逃げた先に・・・

もう書いてから数週間たつのですが、なんだかんだで公開していなかった小説です。


「逃げた先に・・・」


おれは逃げていた。いや、追われているといったほうが正確だろうか。


おれは北川銀行から30億円を奪い、今はサイレンが鳴り響く警察の車を後ろに見ながら山沿いの道をバイクで駆けていた。
「前方のバイク、止まりなさい」
パトカーの拡声器から声が流れるがそんな事で止まるようならば最初から強盗などしないのである。
しばらく同じような駆け引きをしていると、細い道が見えた。
ちょうどパトカーを引き離したところで、ここなら車では追って来られまいと思い、おれはその細い道に入った。予想通り、警察は追ってこないようだ。
さらにしばらくバイクを走らせていると、前方に柵が見えた。
「立入禁止 財団法人 旧市街管理機構」と書いてある看板があった。
ここの近辺は昔、関東平野と呼ばれていたらしい地方だ。
おれは新東京の人間で、しかもここ数年、昔やった別の件で国外に逃げていたから、詳しくは分からないが、かなり人は減っているという話を聞いている。
この立ち入り禁止の柵の先へ逃げれば、そうそう警察も追いつかないだろうと思い、おれはこの柵の先へ逃げることにした。


関東平野もまだ居住地が残っているらしいが、20年前の政府による新東京への移住事業で移住した人々がほとんどで、その人々が住んでいた市街地を管理しているのが旧市街管理機構だと聞いたことがある。
そんなこんなで走っていくと、荒れた線路跡があった。
その線路沿いに走っていくと、大きな塔が見えてきた。
おれはとりあえずその塔を目指した。


1時間くらい走っただろうか、その大きな塔の根元にたどり着いた。
その塔の名前はどうやら「東京スカイタワー」というらしい。
周りを見回してみても、人はいない。まぁ、ほとんど人は住んでいないので当然といえば当然なのだが。
塔の中にはエレベーターがあった。
どうやら動いていないらしい。


もう一度外へ出て、今走ってきた方向を見ると、その方向にも大きな建造物があった。
特殊コンクリートで作られた城壁のように立ちはだかる何かだった。
おれは塔の階段を少し登って、その城壁らしき物をもう一度見てみる事にした。


50メートルくらい登っただろうか。
走ってきた方向をもう一度見ると、そこにはやはり特殊コンクリートの城壁らしき物体があった。
しかい、良く眺めていると、恐ろしい事が起きていた。
そこから水があふれ出てきているのである。



その頃、テレビ局はおしなべて特別番組を放映していた。
「ついに3年を掛けた大プロジェクトが完成します!あっ、今首相官邸で会見が始まったようです。では会見場につないでみましょう」
「はい、首相官邸です、いま、総理が会見を始めるようです。」
「首相の夏原です。このプロジェクトは水没が始まっている旧関東平野をダムにし、新東京、東北の水源とする事業であります。このプロジェクトは本日までに居住地を手放していただいた住民の方々の協力なくしては・・」



階段から下を眺めてみるともう水が凄まじい速度で上がってきている。
周りには人はいない。いったい何なのだ、この水は。
そうこうしているうちに30メートルくらいの所まで水が来ている。
警察の次は水に追われて死ぬのはごめんだ。
おれはとりあえず上を目指した。


450メートルの所にある展望台まで登ってきてしまった。
通信機らしき物があったが使えそうにない。
「おい、誰でもいい、おれは指名手配犯だ、捕まえろ!頼む、東京スカイタワーだ!頼む捕まえてくれ!」
おれは動きそうにもない通信機に賭けた。だが応答らしきものはない。
水は400メートルくらいの所まで来ているだろうか、もうダメだ。
もうダメだ・・・・・


時は流れ、宇宙国際暦6075年。
「本日も宇宙ふしぎ大発見の時間がやって参りました」
落ち着いた声で司会者が言う。
「今日のテーマは”地球”です。近年やっと再発見された我々の出発点となった星です。
では、VTRを見てみましょう、宇宙ふしぎ大発見!」
「今、私は、ニッポンのカントウ遺跡に来ています。ここには旧時代の権力者の墓と見られる建造物があります。これです!大きな塔でしょう。実は!この塔は地下200メートルから建造されていて、4000年近く前の街がそこにあることが最近の研究で分かってきています。」
レポーターが癖のある、大げさな説明口調で話す。
「そして、ここがその権力者の墓と見られる場所です。旧時代の紙幣と思われる紙片と遺体があります。特に紙片の数は圧巻で、部屋中に撒かれています。さらに部屋はガラス張りで、おそらく彼が支配していた街が見渡せるように作ったのでしょう。」





この大きな間違いは、タイムマシンの発明まで正されることはないのであった。


駄文失礼。