忘れもしないあの名前:2・消えた反応
やっと第2章を書きました・・・
第一章はこちら
第2章:消えた反応
「じゃあ誰が行くんですか?誰も行かないと思いますよ?」
少しきつい声で私は言った。
「それは分かっている。自分が言ったことだ。私が行く。」
「中尉!本当に無茶ですよ?いいんですか?」
「もし私がいなくなったところでこの連合宇宙軍が誇る特殊戦艦は困るまい。君が操縦できるだろう」
「何を言っているんですか中尉。困ります。」
すると、秋水中尉はさらに落ち着いた顔をして
「確かに君は困るかもしれないが、私はこの謎を解いておきたいのだ。理由は分からないが、私にはこの謎を解かなければいけない気がするのだ。」
「そうですか・・・」
私が引き留めるのを諦めたというのを察すると、秋水中尉はスペース・スーツに着替えはじめた。
全く、現場主義だけあって、行動が早い。
着替え終わると、メインブリッジのどこからでも見える位置に立ち、中尉は話し始めた。
「今から私はカーシオン第23クレーターへと向かい、異常なベータ崩壊の原因を調査する。これは非常に危険の伴う作業ではあるが、誰かがこれを行わなければ宇宙史は永遠に進展しないままである。であるからして未開の地に進むのである。もし私が何かトラブルに巻き込まれたとしても、そのときはこの艦がきっと諸君らを守ってくれるはずである。
安心してもらいたい。」
威厳がある演説を終えると、私の方を振り向いて、
「春瀬君、もし私が1宇宙協定時間以内に帰還しなかったら、ここを離れるように。」
「えっ」
と言おうとしたが、もうすでに中尉はハッチの中に消えていた。
そしてしばらくして無線回線がつながった。
「・・こちら秋水。331隊聞こえますでしょうか」
通信士の緑川准尉が即座に応答した。
「こちら331隊。秋水中尉、聞こえますでしょうか。こちらには了解度5、信号強度7で入っております。」
「・・・こちら秋水。了解した。ではこれからカーシオン第23クレーター近傍まで接近、そこから巡航艦で着陸する。私が帰還するまでの最高司令官は春瀬副司令だ。任せた。」
「了解。無事帰還を祈ります。」
しばらくの間、通信は入らなかったが、レーダーで位置は把握していた。
しばらくすると、機影は第23クレーター上まで来ていた。
「こちら秋水。ただいまより着陸態勢に入る。着陸後再び回線を開く。」
「了解」
そして再びの入電。
「こち・・秋水・・・聞こ・・・でしょうか」
今度はノイズがひどい。
「こちら331隊。ノイズがひどいですが聞こえます。」
「了解。ただいまより探査を行う。」
「了解。」
数十分がたった頃、また入電があった。
「331隊!こちらは秋水。聞こえますでしょうか」
少し眠そうにしていた緑川准尉が慌てて応答した。
「あっ、はい。聞こえています。どうしました?」
「こちら第23クレーター近傍にて人工物らしき物を発見。ただいまより接近する。」
「分かりました。ビーコンの発信を忘れずにお願いします。」
「了解。では・・・うっ、何っ? っあああ!!」
突然秋水中尉の通信から叫び声が聞こえた。
私は緑川准尉からマイクを借り、
「秋川中尉!こちらは331隊!応答願います!応答願います!」
と叫んだ。
だが通信機からはいっこうに音声が聞こえる気配がせず、ノイズが聞こえるのみだった。
「秋水中尉!」
ビーコンの反応も無くなっていた。
私は腕時計を見た。
中尉が艦を離れて30分経っていた。
残り30分で1宇宙時である。
そして時は無惨にも流れ、中尉が艦を離れて1宇宙時が経った。
私は仕方なく
「331隊はこの宙域を離脱、第1宇宙トンネル経由で木星領冥王星に帰還する。」
メインブリッジに暗い空気が流れた。
あのとき私が中尉を止めていればと思うと、私は涙が出た・・・・
こんなとこです。
4章で終わらないかも・・・